11月7日、衆院予算委で答弁する高市首相(写真:共同通信社)
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 高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁について、在大阪の中国総領事が、不適切な言葉で首相を批判するなどして、日中関係の雲行きが怪しくなってきている。この問題の背景にあるのは何か。そして、今の中国はどうなっているのか。マスコミに登場する識者の見解には、私は違和感を感じるものが多い。

総領事の発言は本国の意向を踏まえたもの

 11月7日の予算委員会で、「台湾とフィリピンの間の海峡が封鎖されたら、存立危機事態になるか」という立憲民主党の岡田克也議員の質問に対して、高市は、「戦艦を使い、武力行使を伴えばどう考えても存立危機事態になり得る」と答弁した。

 事態対処法(2003年成立)による重要影響事態、存立危機事態、武力攻撃事態のうち、2番目で、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を指す。自衛隊は防衛出動することができる。

 この答弁に対して、中国の薛剣(Xue Jian)駐大阪総領事が、Xに「勝手に突っ込んできたその汚い首は、一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟はできているのか」と投稿した。

 駐在国の首相に対するこのような礼を失する発言は問題であり、ペルソナ・ノングラータとして追放すべきだという声が高まっている。

中国の薛剣・大阪総領事(写真:共同通信社)

 この発言は外交官個人の独断で行われたものではなく、中国政府、つまり習近平政権の立場を反映したものだということである。中国外務省は、高市答弁に対して、「強い不満と断固反対」を表明し、日本政府に「厳正な申し入れと強烈な抗議」をしている。そして、「日本の現政権が台湾問題に介入するのは戦後の国際秩序への挑戦であり、中日関係を深刻に破壊することになる」とした。

 言うまでもなく、中国にとっては、台湾問題は内政問題であり、他国が干渉すべきものではない。1971年、国際連合における代表権は、中華民国から中華人民共和国に移管され、台湾は国連から追放された。