中国に行かない「中国専門家」

 日本には、中国専門家と称する学者、評論家、ジャーナリストが山ほどいる。彼らは、テレビをはじめマスコミに登場して、中国の現状について解説する。

 しかしながら、そのいずれもが正鵠を得ているかと言えば、その逆であることが多い。なぜ、そうなるのか。それは、中国に行って現地を見聞することがないままに、評論しているからである。

 なぜ行かないのかと言えば、スパイ容疑などで拘束されることを恐れているからである。日本で習近平体制を厳しく批判している論者を中国が歓迎するわけがない。しかし、中国政府も、一介の日本の学者やジャーナリストを追跡しまわるほど暇ではない。

 日本にいたまま集める情報では限界がある。とくに、習近平政権の中枢部と接触せずに、反体制派的な論者の意見ばかり聞いていると、実態が見えなくなる恐れがある。

 私は中国専門家ではないが、何度も中国を訪問し、中国の大学で講義をしたり、国際会議に出席したりする。また、中国のテレビにも出演する。さらには、中国から要人や視察団が来日したときには意見交換する。

 最近は、習近平政権の締め付けが厳しく、それなりの注意が必要で、数年前よりも自由に発言できる余地が減っているように感じる。しかし、中国国内でも非公開にしたセミナーなどで、できるだけ自由な意見交換をするようにしている。

 中国共産党の序列が上の幹部と話すときほど自由が保たれる。中堅以下の党員だと、上司の目を気にして、硬い態度を崩さない。

 さらには、AI、EV、ドローンなど、最先端技術の発展が目覚ましく、数年前にしか訪中していない日本人には、現実が理解できない。顔認証の監視カメラが設置されており、数年前の取り締まりとは全く事情が異なる。

「百聞は一見にしかず」、ビザも不要なので、多くの日本人、とくに「中国専門家」と称する論者の訪中を望む。