(ジャーナリスト:吉村剛史)
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に対する対抗措置として、台湾「封鎖」を思わせる大規模な軍事演習を実施した中国。「台湾有事」の現実味を想起させる報道は、戦後77年の日本社会に衝撃を与えたが、当の台湾社会では「いつもの威嚇」だとする冷ややかな空気も。
正面からの軍事行動だけでなく、SNSを駆使した世論誘導や官公庁へのサイバー攻撃、経済・貿易面でのゆさぶりなど、平時から「ハイブリッド戦」への備え、意識が問われているいま、平和慣れした日本社会では、第二次大戦時に日米間などで展開された対外宣伝謀略など、実際に体験した心理戦の先例を研究して備えてゆく必要がありそうだ。
戦時日本が経験した心理戦の攻防
一見すると紙幣(十円札)だが、拾って裏返せば日本語で日本の軍部、指導者への批判がずらり。
「昭和五年には十円で次の物が買へた。一、上等米二斗五升 一、或ひは夏着物八着分の反物 一、或ひは、木炭四俵…」
「世界の最大強国を相手に三年間絶望的戦争を続けた今日、十円で次の物が買へる。一、暗取引して上等米一升二合、一、木炭少額(買ひ得れば) 一、木綿物なし…」
「以上が諸君の指導者の云ふ共栄圏の成行きである!」
かつて米軍が日本本土空襲の合間にばらまいた「伝単」のひとつだ。