中国の軍事的圧力に冷静な台湾社会
ただし、長年中国と対峙してきた台湾では、センセーショナルな現地報道とは裏腹に一般社会には「中国によるいつもの威嚇」だとして今回の中国の軍事的圧力の背景を読み解き、クールに受け取る反応も見られた。
筆者の電話インタビューに応じた台湾の有力紙記者は、「これまでにもこういうことはあった。しかも今回は中国側が威嚇目的であることを隠していないため、台湾社会はさほど驚かない」「今秋の中国共産党大会で異例の3期目に入る見込みの習近平主席(総書記)としては、ペロシ氏訪台で潰された面子に見合うだけの強気のパフォーマンスが内政向けに必要だった」と冷静に分析。
こうした台湾社会の反応を見越してか、中国は、当初は7日までだった軍事演習を7日以降も継続し、10日になって終了を発表。今後も訓練の継続や台湾海峡方面での巡視を「常態」的に行うと強調し、台湾への軍事的圧力を常態化させる方針をにおわせて、ゆさぶりを強めようと躍起だ。
この台湾紙記者は、「むしろ、2日から4日の間に、台湾の総統府や外交部、国防部のサイトがサイバー攻撃を受け、一時閲覧できなくなったことなどに注目している。単なる視覚的威嚇よりもこうした実害の方が心配…」というのだ。「台湾では安全保障に関わるフェイクニュースを国防部などの手で正し、正誤を公表するシステムがあるが、日本はどうか?」と問いかけている。