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 グローバル化とデジタル化が進む中、変化の激しい時代に対応するため、歴史や哲学を含むリベラルアーツ(教養)の重要性が再認識されている。本連載では、『世界のエリートが学んでいる教養書 必読100冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)の著書があるマーケティング戦略コンサルタント、ビジネス書作家の永井孝尚氏が、西洋哲学からエンジニアリングまで幅広い分野の教養について、日々のビジネスと関連付けて解説する。

 今回は、フランスの社会学者ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』を通じ、人々が商品に「記号」としての価値を求め、SNS時代に加速する消費行動の本質は何かを読み解く。

同じ機能なのに、100円と数百万円の違いがある理由

 ロレックスの腕時計は多くが数百万円するが、時刻を知るだけなら100円ショップで売られている腕時計でも十分。機能は同じなのに、人はなぜ数万倍も高い時計に価値を感じ、お金を払うのか? この仕組みを解明して消費社会の本質を示したのが、1929年生まれのフランスの社会学者であり哲学者でもあるボードリヤールだ。

 今回はボードリヤールの著書『消費社会の神話と構造』(紀伊國屋書店)を取り上げて、消費社会の構造を読み解いてみよう。

 本書の位置付けは、近代西洋哲学の大まかな流れを把握するとよく分かる。

【啓蒙主義(~19世紀)】人間のあるべき姿とは何かを考える
【実存主義(20世紀)】人のあるべき姿はなく、全て自分次第だ、と考える
【構造主義(1960~)】人間の在り方は固定した社会構造で決まる、と考える

 ボードリヤールは構造主義の後に登場したポスト構造主義の哲学者だ。ポスト構造主義ではこう考える。

【ポスト構造主義(1970~)】社会構造は固定しておらず常に変動している