出所:©Ramon Costa/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ 「ZUMA Press」出所:©Ramon Costa SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

 DXに挑むものの、部門内での取り組みに終止し、志半ばで変革に頓挫する企業は少なくない。そうした中、富士通の営業DXをミッションとするデジタルセールスチームは、2020年の始動から3年で120名規模に拡大し、全社展開を進めるフェーズに差し掛かっている。営業DXを持続的な取り組みにするためには、どのような打ち手が有効なのだろうか。前編に続き、2024年8月に書籍『富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法』(翔泳社)を出版した富士通カスタマーグロース戦略室の友廣啓爾氏に、変革チームの「成長の壁」を乗り越えるためのポイントや、飛躍的な成長を導くための戦略について聞いた。(後編/全2回)

DX拡大期における「組織の壁」を乗り越える方法

──前編では、富士通の営業部門が抱える組織課題や、「The Model型」と呼ばれる新たな体制について聞きました。著書『富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法』では、DXに取り組む組織が拡大期に直面しがちな障壁についても触れています。組織の拡大期には、どのような点を意識すべきでしょうか。

友廣啓爾氏(以下敬称略) 組織の成長過程では、「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」があると言われます。デジタルセールス組織の拡大に伴って、例えば業務内容や組織文化になじめないメンバーの離職や、帰属意識の希薄化、モチベーションの低下などが見られるようになります。

 これら3つの壁はあくまでも一般論ですから、全ての組織に当てはまるとは限りません。私たちの場合、30人の壁には直面しませんでしたが、メンバーが50名に近づくにつれて、退職者や他部署に異動する人が増えていきました。

 残ったメンバーに対しても、「チームが目指すゴール」がうまく伝わらず、指示も届きにくくなっていました。チームの目的や方針にコミットできないメンバーが増えると、やがて内部崩壊をもたらします。それを避けるために欠かせないのが「働きやすい組織づくり」です。

 働きやすい組織をつくるためには、「ウェルビーイング経営」の考え方が大きなヒントとなります。ウェルビーイング経営とは、従業員が心身共に健康で、社会的なつながりや帰属意識を感じられる状態を目指し、職場環境を改善する経営手法のことです。

その中でも、私たちが重要視しているのは「組織文化の醸成」です。特に、心理的安全性の確保は基本中の基本だと考えています。なぜならば、組織が成長するためには「黄色信号」の時点で危険を察知し、早めに対処することが極めて重要だからです。「赤信号」になってからでは復活が難しく、仮に復活できたとしても各人に大きな負荷がかかるため、先手を意識した対応が必要なのです。