日本の株式市場に参入するアクティビスト(物言う株主)が増加し、今や日本は「アクティビスト大国」と呼ばれている。その原因は「日本には残念な企業が多い」ことにある、と言い切るのが小樽商科大学教授の手島直樹氏だ。2024年5月、著書『アクティビズムを飲み込む企業価値創造 高ROE、PBR経営実現への処方箋』(日経BP 日本経済新聞出版)を出版した同氏に、アクティビストに狙われやすい企業の特徴や、アクティビスト対応の実例について聞いた。(前編/全2回)
アクティビストのターゲットになりやすいのは「残念な企業」
――著書『アクティビズムを飲み込む企業価値創造』では、アクティビストのターゲットになりやすい「残念な企業」について解説していますが、具体的にどのような企業を指すのでしょうか。
手島直樹氏(以下敬称略) 企業価値向上のポテンシャルがあるのに十分な工夫をしていなかったり、適切な対応策を講じていなかったりするために、株価が本来の価値よりも割安になっている企業を「残念な企業」と表現しています。
アクティビストはさまざまな「処方箋」を使って、残念な企業の力を引き出し、株価を上昇させようとします。その点から言うと、残念な企業は株価が伸びる潜在能力を持っている企業ですから、箸にも棒にもかからない「ダメな企業」とは大きく異なります。
残念な企業になってしまう要因は2つあります。1つ目は、過剰な資産や資本を抱え、バランスシートが肥大化していることです。2つ目は、収益が資本コストを下回る不採算事業を抱えており、他の事業の足かせになってしまっているケースです。どちらの要因も解消することは難しくありませんが、多くの日本企業が有効な対策を講じていません。
その背景にあるのは、日本企業が「お金を稼ぐ力」はある一方で、「稼いだお金を使う力」が弱いという課題です。単に稼いだお金を持っているだけでは、アクティビストの格好のターゲットになってしまうのです。
――自ら残念な状態を脱した企業はありますか 。