オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は2017年7月、川崎汽船、商船三井、日本郵船の3社の定期コンテナ船事業を統合し設立された。本拠地はシンガポールに置く。邦船各社は長い間、同事業の業績が低迷し苦戦していた。しかしONEは設立以来、まさに生まれ変わったように好業績を維持している。その裏にはどのような変革があったのか。(前編/全2回)
コンテナ船の運賃が上昇し、好業績を続ける
オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は2024年10月31日に、2025年3月期(2024年4月~2025年3月)の税引き後利益予想を30億9500万ドル(約4700億円)と発表した。従来予想の27億4500万ドルからの上方修正だ。中東情勢などを背景に、コンテナ船の運賃が高騰していることが大きな要因だという。
2023年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃したことを発端に、中東での地政学リスクが高まっている。スエズ運河のある紅海に面したイエメンではハマスと連帯する反政府勢力「フーシ派」が軍事活動を活発化させている。このため、多くの船会社がスエズ運河・紅海の通航を取りやめ、アフリカ南端の喜望峰を回るようになっている。輸送日数が伸びたことでより多くのコンテナ船が必要となり、結果として運賃が上昇した。
海運業は世界の経済環境や為替動向など、外的要因の影響を受けやすいのが大きな特徴だ。極端な事業環境の変化が生じた場合には、運賃が短期間で急騰することもあれば、その逆も起こり得る。コロナ禍では運賃が高騰したことから、ONEの税引き後利益は、2021年度は167億ドル(当時の為替換算で2兆3380億円)、2022年度は149億ドル(同2兆860億円)と、驚くべき利益を上げている。
ただし、ONE グローバル・チーフ・オフィサーの岩井泰樹氏は、「数字はあくまでもその時点の結果であり、一喜一憂はしていません」と語る。