日清食品常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長、NISSIN ACADEMY学長、フィジカルインターネットセンター理事の深井雅裕氏(撮影:宮崎訓幸)
写真提供(左):日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 第12回からは5回にわたり、日清食品常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長で、フィジカルインターネットセンターの理事を務める深井雅裕氏を迎えた特別対談をお届けしている。第14回ではCLO(最高ロジスティクス責任者)と「物流統括管理者」の違い、そしてサプライチェーン全体の最適化を司るCLOの職能について語り合う。

「CLO」と「物流統括管理者」はどう違うのか

菊田 第12回第13回では、深井さんが理事を務めるフィジカルインターネットセンター(JPIC)がまとめた提言「物流革新実現に向けてCLO(Chief Logistics Officer、最高ロジスティクス責任者) に求められる要件」を基に、「CLOの定義」「CLOの3つの役割」他について話し合いました。

 対談の後半はまず、あるべき「CLO」の役割に対し、改正物流効率化法(物効法)で特定荷主に設置が義務付けされた「物流統括管理者」との関係はどうなのか、注目のテーマに踏み込みます。

 第12回で触れた通り、物効法の法文自体に「CLO」の表記はありません。しかし政府の関連文書の中に準備段階から「物流統括管理者(CLO)」との表記が登場したことで、「物流統括管理者=CLO」との解釈が生まれ、民間でも当たり前のように使われ出している。私は強い違和感を覚えてきました。

 なぜそれが問題なのか、改めて説明しておきます。物効法本文において物流統括管理者の役割は、図表1のように規定されています。

図表1 改正物流効率化法に規定された物流統括管理者の役割

 ここに示された物流統括管理者の主業務を、付帯文書等で補って若干かみ砕くと、

①荷待・荷役時間の削減
②積載率の向上(貨物重量の増加)
③運転者への負荷軽減
④車両の過度の集中の是正
⑤中期計画策定・管理体制整備
⑥その他主務省令で定める業務

 になります。ではこれを、「物流」と「ロジスティクス」の国家規格たるJIS(日本産業規格)の定義、そして前回までに参照したJPICの「CLOの定義・役割」と比較してみましょう。

 以上4種の役割定義を横軸にとり、縦軸に「物流/ロジスティクス/サプライチェーン/社会課題」の4つのレイヤーを置き、マトリクスで一覧表にしてみました(図表2)。