電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等を経て独立し、現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動するライプニッツ代表取締役の山口周氏。同氏は、日本のGDPが、かつての世界第2位から順位を徐々に下げているデータに触れ、「1人当たりのGDPで見れば2023年時点ですでに32位。日本はもはや先進国と言えるか崖っぷち」と指摘する。衰退の原因と、解決策となる考え方を語った講演の骨子をまとめた。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第5回 取締役イノベーション」における「特別講演:クリティカル・ビジネス・パラダイム~少数派による批判的アクションが社会的イノベーションを生み出す~/山口周氏」(2024年5月に配信)をもとに制作しています。

1人当たりGDPは2位から32位に転落

 本題に入る前に、GDP(国内総生産)を見てみます。日本のGDPは2023年にドイツに抜かれ、世界4位になりました。2025年にはインドにも抜かれると予測されており、実現すれば5位に下落します。

 このランキングは付加価値の合計額ですが、GDPで見ると2000年に世界2位だった日本の1人当たりGDPは、2023年の時点で32位です。合計額と比べて大幅な下落となっています。この順位を知ると、先進国といえるのか、疑問に思います。

 IMF(国際通貨基金)では、便宜上の先進国を定義するに当たり「1人当たりGDPが40位以上であること」を条件の1つに挙げています。IMFの考え方に基づけば、日本はすでに先進国といえるかどうか、崖っぷちの状況にあるのです。