
マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のコンサルタントらが行った調査によると、40年前に「超優良企業」と呼ばれていた企業群のうち、現在までに約4分の1が破綻もしくは買収を経験しているという。栄枯盛衰が激しいビジネスの世界において、輝き続ける企業とそうでない企業との違いは何なのか。本連載では『超利益経営 圧倒的に稼ぐ9賢人の哲学と実践』(村田朋博著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。成長を続ける経営者たちの思考や哲学を元に、現代の経営に求められる教訓を探る。
今回は、ミネベアミツミ会長CEOの貝沼由久氏にフォーカス。社長在任の15年間で業績を5倍に成長させた手腕に迫る。
ミネベアミツミ中興の祖 貝沼由久氏
書を捨てよ、現場に出よ。戦略と執行の経営者

ミネベアミツミはミネベアとミツミ電機が経営統合して発足した企業です17。ミネベアの前身である日本ミネチュアベアリングは、日本航空の技術者・富永五郎氏などが航空産業に不可欠な極小ベアリングの国産化を目指し設立した企業です。髙橋精一郎氏が資金的な援助をし、経営は子息の髙橋高見氏に委ねられることになりました。
髙橋高見氏は、少年時代から「寝ないで働く実業人の生活をしたい」と考えていました。同氏の入社時、社員55人、売上高4000万円の小企業でしたが、60歳で早逝されるまでのわずか30年で、売上高2000億円の企業に発展させたのです。髙橋高見氏は第一の中興の祖、貝沼氏は第二の中興の祖と位置付けられます。
■ 弁護士資格を持つ経営者
貝沼氏は1980年に司法試験合格、1983年に日本で弁護士登録、1989年にはニューヨーク州弁護士登録。弁護士として勤務の後、1988年に髙橋高見氏から要請を受けミネベアに法務担当取締役として入社(32歳)。その半年後に(1989年5月)、髙橋氏は急逝しています。
20年後の2009年4月に代表取締役および社長執行役員に就任、2017年代表取締役会長兼社長執行役員(CEO&COO)を経て、2024年会長兼CEOに就任。入社から社長就任の間には、法務関連のみならず、赤字事業の立て直し(高級家具事業や半導体メモリー事業〈これらはのちに譲渡〉、パナソニックとの合弁事業等)、営業責任者として多くの新規顧客の開拓などの実績を残しています。
17 ミツミ電機は1954年に森部一氏が東京・大田区で創業。各種電子部品の他、パソコン用記憶装置、半導体などに事業を展開。1990年代に売上高2000億円を超え、主要電子部品企業の1社となりました。また、世界的アミューズメント企業のゲーム機の組み立て企業の1社としても知られます