
マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のコンサルタントらが行った調査によると、40年前に「超優良企業」と呼ばれていた企業群のうち、現在までに約4分の1が破綻もしくは買収を経験しているという。栄枯盛衰が激しいビジネスの世界において、輝き続ける企業とそうでない企業との違いは何なのか。本連載では『超利益経営 圧倒的に稼ぐ9賢人の哲学と実践』(村田朋博著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。成長を続ける経営者たちの思考や哲学を元に、現代の経営に求められる教訓を探る。
今回は、破綻寸前だったルネサス エレクトロニクスの会長兼CEOに就任、V字回復へと導いた作田久男氏の修羅場の経営に迫る。
ルネサス エレクトロニクス元会長兼CEO作田久男氏
火中に飛び込み、修羅場を克服した経営者

筆者が作田久男氏に初めてお会いしたのは、オムロンの社長(創業家以外からの初の社長)就任が発表されたころだったと記憶しています。オムロン社長時代、作田氏は幹部候補の勉強会の講師として筆者を招いてくれました。
当時、筆者は米国モルガン・スタンレーの企業・産業調査アナリストとしてオムロンを担当、同社に関する厳しい論調のレポートを書くこともありましたが、作田社長は「君の言う通りだ」とおっしゃいました。内心忸怩たる思いもあったと思いますが、事実であるから仕方ない、そういった意見をばねにして会社を変えないといけないとの考えであったと拝察します。
ことほどさように、作田氏は年齢にかかわらず直言する人を受け入れてくれる経営者でした。のちに、なぜ筆者を勉強会に呼んでくださったのですか、とお聞きしたところ、「俺は変わった奴が好きなんだ」とおっしゃいました。最高の誉め言葉だと勝手に解釈しました。
作田氏はオムロンの会長退任後、請われて、当時瀕死の状態にあったルネサス エレクトロニクスの会長兼CEOに就任し、劇的な回復を実現、現在の高収益企業の礎を築かれました。作田氏から学んだことは、何より、修羅場での胆力です。そして、「答えのない問い」について改めて考えることになりました。