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 マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のコンサルタントらが行った調査によると、40年前に「超優良企業」と呼ばれていた企業群のうち、現在までに約4分の1が破綻もしくは買収を経験しているという。栄枯盛衰が激しいビジネスの世界において、輝き続ける企業とそうでない企業との違いは何なのか。本連載では『超利益経営 圧倒的に稼ぐ9賢人の哲学と実践』(村田朋博著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。成長を続ける経営者たちの思考や哲学を元に、現代の経営に求められる教訓を探る。

 今回は、創業以来、粗利益率80%を維持する超高収益企業キーエンスの価値創造の源泉を探る。

超利益経営』(日本経済新聞出版)

■ キーエンスは「つんく♂」である――世界の技術を演出

 キーエンスには優れた技術があると思われますが、それだけで驚異的かつ長期にわたり持続されている高利益率を説明できるほどではないといえます。なにせ、創業来50年にわたり粗利益率80%を維持しているわけですから。

 通常、これほどの利益率の場合、何かしらの特許(例えば医薬品)もしくは互換性(例えばマイクロソフトの製品)といった極めて高い参入障壁があるはずですが、それもありません。キーエンスの製品は高度とはいえ、他の企業でも作ろうと思えば作れるように思われます。

 では、なぜキーエンスだけが驚異的な利益率なのか。筆者の理解は、キーエンスは「演出家」 であるからです。

 例えば、レーザーセンサーの場合、重要な部品は半導体レーザーですが、半導体レーザーをキーエンスが製造しているわけではありません。重要なのはレーザーを使って「何をするのか?」なのです。

 これは演出家に似ています。演出家は、物語、俳優、音楽、衣装などを統括し劇に昇華させます。最も重要なのは、「どんな物語を誰にどのような舞台でどのように演じてもらうか」という創造性なのです。