
AIが進化を遂げる現代において、人間にしか生み出せない価値とは何か? 2025年に創業120年を迎えたコクヨはその答えを「好奇心」という言葉に託し、新たなコーポレートアイデンティティーを策定した。「自律協働社会」の実現を目指し、その取り組みは映画制作や街づくりにも及ぶ。Japan Innovation Review主催のセミナーに登壇した経営企画本部クリエイティブセンタークリエイティブディレクター安永哲郎氏による講演の内容を基に、コクヨの取り組みの真意を紹介する。
120周年を機にCIを刷新、キーワードは「好奇心」
コクヨは2025年10月に創業120年を迎えました。この大きな節目において、私たちはコーポレートアイデンティティー(CI)を刷新し、新たな一歩を踏み出しています。その中心にあるのが、新しいコーポレートメッセージ「好奇心を人生に」です。私たちはこの言葉を、単なるキャッチコピーではなく「社会との約束」と捉え、自分たちの役割を果たしていきたいと考えています。
私たちが考える「好奇心」とは何か。あえていえば、それは「AIが持つことのできないもの」です。人間ならではの心の機微や、社会との関わりの中で内側から自然と湧き上がってくる感情。これこそが私たちが提供する価値の中心に据えたいものです。製造業として長く歩んできましたが、私たちが提供しているのは、モノやコトを超えた体験であり、そこから生まれる感情としての好奇心なのです。
コクヨは1905年に帳簿の表紙をつくる会社として創業しました。以来、ノートなどの文房具やオフィス家具、通販などさまざまな事業を手掛けてきましたが、そのいずれの始まりにも根底に好奇心があったのではないか。自分たちをそう捉え直しています。
これまでの歩みの中で数多くのブランドを生み出してきましたが、その集合体を見て「私たちは一体、何屋なのか」と問い直したとき、たどり着いた1つの結論が「好奇心屋」です。
好奇心は、競争を生みません。好奇心は、他者へのリスペクトを生みます。一人一人が活躍するのはもちろんですが、そこに競い合いというよりも、それぞれの個性が混ざり合うコラボレーションが生まれていく。私たちは、好奇心こそが、互いに個を尊重し協力し合う「自律協働社会」を実現するエンジンだと考えています。だからこそ、私たちは「be Unique.」という理念をベースとし、「好奇心を人生に」というキーワードで社会とつながろうとしているのです。






