写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
投資家をはじめとするステークホルダーとの対話のプラットフォームとして進化する統合報告書。その完成度の差は、企業の価値創造ストーリーの説得力を左右する。シティグループ証券などで長年セルサイドアナリストを務め、一橋大学CFO教育研究センターで「投資家との対話」をテーマに講義する松島憲之氏が、「WICI統合リポート・アウォード2025」の審査結果と評価のポイントを基に、現在の統合報告書が直面している課題を分析する。明らかになるのは、優れた統合報告書ほど「知的資産経営」を軸に自社の強みを可視化し、投資家に的確に伝えているという事実だ。
増加する統合報告書の発行
投資家などとの対話のツールとして統合報告書を発行する企業が増加している。企業が投資家との対話を進めようとする姿勢の変化の表れだ。すでに発行社数は1000社を超えるが、その内容は極めて高いレベルのものと統合報告書とは呼べないレベルのものまで玉石混交である。
統合報告書は、企業の財務情報と非財務情報(潜在的価値情報)を統合的に開示するリポートで、将来思考で作成される。提出に法的義務がある有価証券報告書では、内容は正確であっても財務情報などは過去の実績の記載しかなく、分析上で重視される売上高の内訳の開示といったものもない。
これに対し統合報告書では、企業は非財務情報も活用して戦略を語り、企業価値創造を将来どのように実現するかを予想も含めて説明する。過去から現在、そして未来にわたる価値創造ストーリーを一貫して語ることが求められているのである。
よくできた統合報告書では価値創造ストーリーが、財務情報と非財務情報の連携をうまく生かして展開される。この価値創造ストーリーこそが、財務報告書だけでは伝え切れない部分であり、投資家が最重要視するポイントである。
しかしながら、これがしっかりできておらず改善が必要な統合報告書がいまだ大半を占めているのが現状だ。






