写真:Japan Innovation Review編集部

 マッキンゼー・アンド・カンパニー出身のコンサルタントらが行った調査によると、40年前に「超優良企業」と呼ばれていた企業群のうち、現在までに約4分の1が破綻もしくは買収を経験しているという。栄枯盛衰が激しいビジネスの世界において、輝き続ける企業とそうでない企業との違いは何なのか。本連載では『超利益経営 圧倒的に稼ぐ9賢人の哲学と実践』(村田朋博著/日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。成長を続ける経営者たちの思考や哲学を元に、現代の経営に求められる教訓を探る。

 今回は、マブチモーターを世界的企業に発展させた創業者・馬渕隆一氏の経営者としての類いまれな思考を紹介する。

マブチモーター創業者 馬渕隆一氏
数多の試練を乗り越え、たどり着いた理念の経営者

超利益経営』(日本経済新聞出版)

■ 出会いと学び

 マブチモーターの創業者で当時社長であった馬渕隆一氏に初めてお目にかかったのは、千葉・松戸市の本社でした。いまでは吹き抜けが開放的な美しい社屋に建て替えられていますが、当時は素朴な社屋の和風な一室。

 隆一氏はマスコミにはほとんど登場せず、この面談も同社の広報部門に頼み込んで実現したものでした。一代で高収益企業を築き上げた経営者というイメージからは想像できないほど、穏やかな方でした。

 マブチモーターの起源は、共同創業者である隆一氏の兄・馬渕健一氏が発明した、世界初の新型のモーター(それまでの電磁コイル式ではなく永久磁石を用いた「馬蹄型マグネットモーター」)です。技術に強い健一氏と、技術に加えて経営の才も兼ね備えた隆一氏の兄弟で、マブチモーターを世界最強のブラシ付きモーター企業に育てあげました。

 隆一氏からは多くのことを学びましたが、なかでも心に響いたことは、①原理原則に基づいた合理的な判断、②自分を律すること、③「潮の満ち引き理論」です。