写真提供:©Pavlo Gonchar/SOPA Images via ZUMA Wire/Utrecht Robin/ABACA/共同通信イメージズ

 AIの進化により、サプライチェーン・マネジメント(SCM)改革は喫緊の経営課題となった。P&Gやユニリーバは需給・在庫のリアルタイム予測、為替やCO2排出量などの外部要因の即時反映、損益計算書・貸借対照表の連動を制度化している。また、バリューチェーンでは、上流の素材メーカーが情報をブラックボックス化する一方、下流の小売やブランドはAIを使って川上を可視化し、構造の逆転を狙う。情報の非対称性を巡る主導権争いが激化する中、勝つ企業はエコシステム全体で仕組みを設計している。『BCGが読む経営の論点2026』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から一部を抜粋・再編集。経営の判断と実行をつなぐSCM改革の具体策を探る。

経営が打つべき次の一手とは

BCGが読む経営の論点2026』(日経BP)

 AIの進化により、SCMの変革は今すぐ取り組むべき経営課題となったことは理解してもらえたと思う。そこで今問われているのは、経営が変革に踏み出す覚悟だ。SCM改革においては、判断構造に加え、「何を基準に判断するか」という判断軸を明確にすることも欠かせない。判断の構造が設計図だとすれば、判断軸は方針書である。

 判断軸は、一度決めたら終わりではなく、外部環境や戦略の変化に応じて定期的に見直されるべきものだ。経営は「軸を定義し、変化を検知し、再定義する」というループを設計することが重要になる。属人的な判断基準を形式知として構造化することが、競争優位の源泉になる。そしてAIは、こうして構造化された判断軸に沿って、変化に応じた現実的な選択肢を提示し続ける補助線となる。

■ SCM構造の因果モデルを可視化する

 AI導入の前提として、自社のSCM構造を因果関係で把握する必要がある。AI導入の第一歩は「どの判断・アクションにどのデータを使いたいか」から設計することである。拠点ごとの在庫配置とルール、欠品や緊急輸送の要因、地政学やESGリスクの影響範囲などが例に挙げられる。

 こうした因果モデルにより、需要や為替、災害などの要因がどのKPIやプロセスに、どう連動するかを見える化させる。前提となるデータ定義の統一も重要だ。ただ前述のように「在庫1000個」の意味が拠点ごとに異なるような状況だと、判断も分断される。