カナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタールは、2025年7月にセブン&アイ・ホールディングスに対する買収提案を撤回した
写真提供:共同通信社

 ブラザー工業、ニデック、第一生命保険など、同意なき買収の事例が増加している。背景にあるのは、2014年以降の一連のガバナンス改革と、2023年8月に経済産業省が公表した「企業買収における行動指針」だ。狙われやすい企業の特徴とは何か。そして、どのような備えが必要なのか。
BCGが読む経営の論点2026』(ボストン コンサルティング グループ編/日経BP)から一部を抜粋・再編集。企業防衛の実践的なポイントを解説する。

同意なき買収という新常態

BCGが読む経営の論点2026』(日経BP)

 2024年にセブン&アイ・ホールディングスがカナダの流通大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けたことが報じられると、日本のビジネス関係者の間に激震が走った。日本の小売最大手が外資企業による買収の標的となったのだ。その後、ACTは提案を撤回したものの、「同意なき買収」はここ数年で増加傾向にある(図表7-1)。

 たとえば2024年には、プリンター大手のブラザー工業が業務用プリンターメーカーのローランドDGに対して、物流業界ではAZ-COM丸和ホールディングスがC&Fロジホールディングスに対して、株式公開買い付け(TOB)を試みた。

 ニデックが牧野フライス製作所に事前の通告なしに同意なき買収を仕掛けたことも話題となった(その後、牧野フライスはPE〈プライベート・エクイティ〉ファンドのMBKパートナーズとの連携による株式非公開化を選択している)。これらはいずれも不成立に終わったが、2023年のニデックによるTAKISAWAの買収や、2024年の第一生命保険によるベネフィット・ワンの買収のように、成功する事例も現れている。