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 成功している会社にはさまざまな成功要因がある一方で、失敗している会社には一定の負けパターンがある――。こう語るのは、経営人材育成を手掛けるマインドシーズ社長の丹羽亮介氏だ。負けパターンに陥らないための「経営戦略の定石」とは?2025年7月に書籍『勝てる市場を選び、勝つための強みを作る はじめての経営戦略』(フォレスト出版)を出版した同氏に、経営戦略の基本となる考え方や実例について話を聞いた。

経営戦略論には「2つの王道」がある

――著書『勝てる市場を選び、勝つための強みを作る はじめての経営戦略』の冒頭では、伝統的な経営戦略論の二大流派について解説しています。それぞれどのような考え方なのでしょうか。

丹羽亮介氏(以下敬称略) 経営戦略論には「ポジショニング派」と「リソース・ベースド・ビュー派」という二大流派があります。「市場のどのセグメントを選ぶのか」を重視する人たちをポジショニング派、「社内の経営資源こそが競争優位を生む」と考える人たちをリソース・ベースド・ビュー派と呼んでいます。

 ポジショニング派で重要視されるのは、そもそも競争の少ない市場を選ぶこと、あるいは競争の少ない環境をつくり出す、という考え方です。これを「市場選択」と呼びます。

 例えば、10分ヘアカットで知られるQBハウスの市場選択を見てみましょう。もともと理容業界では「顧客一人につき1時間のカットで3800円程度を売り上げる」という慣習がありました。その中でQBハウスは「髪を切るだけでよい」というコアなニーズに着目し、そこだけを市場として切り出しました。

 このように市場選択することで、求められる経営資源も変わってきます。QBハウスの例で言えば「髪を切るスピード」が最も重要なスキルになる一方、従来はリピーター確保のために求められていた「トーク力」「接客力」といったスキルは不要になりました。市場の選択によって、これまでと違う「経営資源(スキル)の獲得」が必要になったのです。

 一方で、リソース・ベースド・ビュー派では「自社ならではの経営資源」を競争優位の源泉と考えます。その一例として挙げられるのがユニクロです。