出所:共同通信イメージズ
2025年、NHK大河ドラマで注目を浴びた江戸時代の出版人・蔦屋重三郎(以下、蔦重)、新業態の仕掛け人として知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)創業者・増田宗昭氏。両氏の歩みをたどり、そのシンクロニシティ(共時性)についてひもといた一冊が、2025年9月に出版された『二人の蔦屋 蔦屋重三郎と増田宗昭』(太田出版)だ。本書の著者、湘南ストーリーブランディング研究所社長でコピーライターの川上徹也氏に、増田氏の経営哲学や、蔦重と増田氏のビジネスに見られる共通点、相違点について聞いた。
「屋号の不統一」を容認した理由
──著書『二人の蔦屋』では、「TSUTAYA」「蔦屋書店」という2つの屋号の関係性について述べています。増田氏はどのような考えのもとで2つの屋号を使い分けていたのでしょうか。
川上徹也氏(以下敬称略) この屋号の違いについて、私は以前から不思議に思っていました。多くはフランチャイズ店でも「TSUTAYA ○○店」という表記が多いのですが、中には「ビッグワン TSUTAYA」「TSUTAYA 明文堂」のように経営母体の会社や書店の屋号と並列で表記されている店、フランチャイズ店にもかかわらず屋号にTSUTAYAが付いていない店までありました。
この点について、幸いなことに本書を執筆するにあたって増田氏本人に話を聞くことができました。まず、蔦屋書店がTSUTAYAになった理由です。
フランチャイズを始めた頃、資金的に余裕のある加盟店は書籍やレンタルビデオを扱うことができた一方、「利益の大きいレンタル事業だけで商売を始めたい」を考える加盟店も多かったそうです。しかし、「本が置いていないのに『書店』はおかしい」ということで、一部のフランチャイズ店はTSUTAYAになりました。
続いて、屋号の不統一についても尋ねたところ、意表を突く答えが返ってきました。「日本文化の一番ええところは『曖昧さ』や」と言うのです。







