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サッポロホールディングスは、恵比寿ガーデンプレイスの売却を進める 

 不動産業界は今、資材・人件費高騰により建設コストが増加し、価格や賃料の上昇でもそれらを吸収するのが難しい状況に向き合っている。さらに投資家の圧力や新リース会計基準といった環境変化も進み、業界全体で最適な戦略を模索中だ。フーリハン・ローキーのセクターレポート「不動産セクター マーケット動向レポート(2024年度決算概要) 」を監修した高橋良友氏に、不動産各社の機会とリスク、今後について聞いた。

(*)当シリーズでは、フーリハン・ローキーが発表しているセクターレポートの監修者が、各業界における主要企業の業績・株価・注目のM&A(合併・買収)の動向から戦略を読み解きます。

コスト増大のリスクと地価上昇のメリット

 不動産業界は今、大きな環境変化に直面している。資材価格の高騰や建設現場の人材不足、上昇しつつある金利などは、全てコスト増の要因だ。これらの1つを取り出しても影響は大きいが、まとめて押し寄せているのだから巨大なインパクトがある。

「激変といっても過言ではない」と語るのは、フーリハン・ローキーのマネージングディレクターを務める高橋良友氏である。高橋氏はこう続ける。

「不動産セクターの全てのプレーヤーに影響があります。特に大きな影響があるのは、期間の長いプロジェクトを手掛けている総合デベロッパーでしょう。

 土地の仕込みから施設のオープンまで3~5年、それ以上かかるケースもあります。その間に資材費・人件費が急上昇すれば、建設コストは当初予定を大幅に上回ることになります」
 
 建設コストの上振れによるプロジェクト中止も相次いでいる。東京・中野区は中野サンプラザの再開発計画を白紙に戻した。JR九州は博多駅線路上に建設を予定していた複合ビル建設の計画を中止した。構想・計画段階なら撤退も選択肢かもしれないが、通常の場合、着工後には前に進む他ないだろう。

「総合デベロッパーの中でも、コスト増に耐えられる体力のあるところ、そうでないところの二極化が進みつつあります」と高橋氏は言う。