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 2025年現在、建築費の高騰や金利環境の変化を受け、不動産デベロッパーの間では従来の新築中心モデルを見直す動きが広がっている。街全体の魅力を総体として高める「エリア価値向上」への関心が高まる中、特に注目されているのが“再生型のまちづくり”だ。

 A.T.カーニーのコンサルタントが18業界の課題を整理した『A.T.カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(A.T.カーニー編/日経BP 日本経済新聞出版)から、小田急電鉄による下北沢の再開発事例を抜粋・再編集。既存の街並みを生かしながらブランド価値を再構築する取り組みから、エリア価値向上のヒントを探る。

エリア価値の向上

A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(日経BP 日本経済新聞出版)

■ 広域まちづくりの取り組みは道半ば

 近年、様々な不動産会社や鉄道事業者の中で、個別の再開発の作り込みだけでなく、その周辺を含むより広範なエリアを対象とした「広域まちづくり」への意識が高まっています。

 職・住・遊を一定のフォーマット化した再開発が広がった結果、街が従来持っていた特色が薄れて均質化が進んでしまい、大規模再開発それだけでは差別化が難しくなっています。こうした状況の中で、価値訴求するエリアをより広域で捉えて、その中にある自社施設や自然・歴史・文化など多様な要素を組み合わせて、広域エリア総体としての魅力をアピールすることで競争力を備えようとする動きが一層強くなっています。

 こうした構想は、単に各社の競争戦略としてだけでなく、人口減少やグローバル都市間競争の激化といったマクロトレンドへの対応の観点からも、持続可能な都市経営を実現する上でとても重要な取り組みですが、現実には構想の実現と足元の現実には依然大きなギャップがあるようです。周辺施設や店舗、交通事業者、行政などとの連携が今以上に必要となる中で、具体的なゴール設定やそこに至るまでのステップ・打ち手をデザインしきれないといった課題に直面しており、結果として、個別のプロジェクトが点在はすれども、これらの面的な連携は十分に実現しきれていない状況にあります。