写真提供:©Kristian Tuxen Ladegaard Berg/ZUMA Press Wire/日刊工業新聞/共同通信イメージズ
高市早苗首相の“台湾有事”発言を受け、日中関係の緊張が高まっている。関税、感染症リスク、物流網の混乱など、企業を取り巻くサプライチェーンの不確実性が増す中、企業はどのように備えればよいのか。
A.T.カーニーのコンサルタントが18業界の課題を整理した『A.T.カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(A.T.カーニー編/日経BP 日本経済新聞出版)から、日立製作所とレゴの事例を抜粋・再編集。サプライチェーンの“縮小と再構築”を進める両社の取り組みから、これからの企業戦略を考える。
企業経営に求められること
『A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(日経BP 日本経済新聞出版)
■ 先んじてサプライチェーンの強靭化に取り組んだ日立製作所
東原敏昭現会長が社長に就任した2014年から、地政学リスクの影響を最小化する「自律分散型グローバル経営」を会社の経営戦略として標ぼうしました。
「世界の各拠点が、日本にある日立本社の意思決定に基づくのではなく、オール日立に共通する理念やリソースを共有したうえで、それぞれが自律的に事業展開していくという理念です。なぜなら各拠点が互いに依存しあっていては自然災害や紛争などで地域情勢が短期的に劇的に変化した場合、共倒れになってしまうリスクがあるからです」(東原氏著『日立の壁』より)
これは、同氏が開発を担当したJR東日本の鉄道運行システム(ATOS)で着想を得たものだそうです。ATOSは中央のコンピューターに権限を集中させ、ネットワークで繋いだ末端のコンピューターに対し統一的に制御する中央集権型と、末端のコンピューターが管轄する範囲だけを自律的に制御する自律分散型を組み合わせたシステムです。
現在の徳永社長も、2025年のNHKによるインタビューで「その国ごとのサプライチェーンを整備し、国を極力またがないことをこれまでやってきたし、今後も着実に進める」とコメントしています。
実際にグループ全体の主要地域ごとの資材調達高における地域産品の比率は8割以上と高い水準です。例えば三菱電機は5割ほどで、三菱重工も正確な数値は非開示であるものの資材調達の7割が日本です。ただ、三菱重工の主要製品であるガスタービンはブレードの精密鋳造などに最先端設備と熟練技能者が必要で、各需要地に生産拠点を設けるのは難しいのも一因です。







