写真提供:DPA/共同通信イメージズ

 2025年11月、サンリオが約150億円規模の自社株買いを発表した。株価が「適切な水準を下回っている」との判断によるものだが、近年の成長を映すように、時価総額は1.8兆円へ拡大し、自己資本利益率(ROE)も49%とエンタメ企業の中で高い水準にある。こうした収益基盤の強化を支えた独自の知的財産(IP)戦略とはどのようなものだったのか。

 A.T.カーニーのコンサルタントが18業界の課題を整理した『A.T.カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(A.T.カーニー編/日経BP 日本経済新聞出版)から、サンリオに加え、「たべっ子どうぶつ」を展開するギンビスの事例を抜粋・再編集。“脱・一本足打法”を軸に、キャラクタービジネスの新たな潮流を読み解く。

マーケットで注目される日系IP銘柄――「エンタメが自動車を超えた日」が映す構造変化

A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2026』(日経BP 日本経済新聞出版)

■ 日本IPの主流化トレンド

 日本アニメの市場規模は2023年時点で3.3兆円を超えました。17年から年率平均7.7%で成長しており、その大宗は北米をはじめとする海外市場が占めていることから、急速なグローバル化が日本アニメをけん引しているといえます。

 2015年ごろにNetflixをはじめとするグローバルプラットフォーマーが日本に参入したことで、アニメを海外展開する際に海外のテレビ局と個別交渉が必要だった状況から、1つのプラットフォーマーとの契約でグローバルにコンテンツが展開できるようになり、格段にグローバル化のハードルが低減しました。また、コロナによる巣ごもり需要やスポーツ・映画などの他エンタメの供給減少が相まって、日本のアニメコンテンツは急速に浸透してきました。

 Netflixは2025年7月に「Anime for Every Fan:Fueling a New Era of Global Storytelling」と題する短いレポートで、「世界のNetflix加入者の50%以上(約1.5億世帯)がアニメを視聴」し、「2024年の再生回数は10億回を超えており」、「Global Top10(Non-English)Listに33のアニメがリストアップされた」と公表しました。