
株価が割安のまま放置されている企業に対し、企業価値の向上を迫る「アクティビスト(物言う株主)」。その多くは外国人投資家だ。東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことを受け、ここ数年、海外アクティビストの活動が活発化している。「株価を意識した経営」とは、いったいどのようなものか。本稿では、『アクティビストが日本株式市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』(菊地正俊著/日本実業出版社)から内容の一部を抜粋・再編集。資本効率の改善に成功している事例を取り上げ、今求められている経営の在り方を考える。
投資家からの評価は、往々にして株価の急上昇という形で現れる。ここではその具体例として、青山商事、西武ホールディングス(HD)、大林組の3社を取り上げ、各社の取り組みのポイントを解説する。
覚悟を示した青山商事に株価は好反応

青山商事は2024年11月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」で、取締役会はPBR0.4倍を危機的水準と認識していると表明し、PBR1倍を目指すには株主還元だけではなし得ず、業績成長が必須であり、ビジネスウェア事業の変革と挑戦を従来にないスピードで進める覚悟だと述べました。
青山商事は2023年度ROEが5.9%と、株主資本コストの6.835%を下回っており、株式市場が織り込む期待成長率も▲1.4%とマイナスになっているとの認識を示しました。2024年度上期の純利益が▲6.3億円の赤字に陥ったこともあり、月次のPBRは3月末の0.49倍→9月末0.38倍と低下しました。
青山商事は2024年度上期売上840億円のうち、63%をビジネスウェアが占めるほか、雑貨販売、リペアサービス、印刷・メディア、カードなど事業が分散しています。本業を強化するといっても、オーダースーツの全国展開に伴うTVCMによる認知獲得、EC売上の増加、本部の経費削減など王道を行くしかないでしょう。また、ビジネスウェア事業は中長期的に縮小基調との株式市場の認識を翻すのは容易でないでしょう。
青山商事は投資家との対話について、「現状、社外取締役との面談の要請はないが、要請があればできる限り実施する」と述べました。株主還元策は配当性向70%またはDOE3%の高いほうを採用するとし、2024年度DPS(1株当たり配当)を減配予想だった1Q決算時の61円から127円へ倍増したことが好感されて、発表翌日に株価はストップ高し、時価総額1000億円を回復しました。