写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

「トヨタ生産方式」や「カイゼン」といったトヨタ式の経営手法を導入しようとする企業は多い。だが、変革を実現するには「型」を真似るのではなく、本質を理解する必要がある。『最強トヨタの最高の教え方』(山本大平著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集。トヨタ出身の戦略コンサルタントが同社での経験を基に、変革をもたらす人材育成の要諦を説く。

 トヨタの「現地現物」の実践によって生まれた「問題解決の思考プロセス」とは?

ベトナムで気づいた「現地現物」の真髄

最強トヨタの最高の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)

 私がトヨタの「現地現物」という思想を単なる教えではなく、自らの思考の核となる「原理主義」にまで昇華させるきっかけとなった決定的な出来事があります。それはトヨタ在籍時に経験した、ベトナムの首都ハノイから車で4時間ほど離れた田園風景の中にぽつんと佇む部品工場での一連の出来事です。

 当時、私は新型車の内装の重要部品を担当していました。その部品はトヨタの関連会社が製造しており、その製造工程の一部が人件費の安いベトナムの工場に委託されていました。ところが、ある時期からその部品に品質の「バラつき」という、製造業において最も不安視される問題が発生するようになったのです。

 同じ図面、同じ製造機械、同じ作業手順で作っているにもかかわらず、あるロットは完璧な品質なのに、別のロットは規格ギリギリの低品質になる。この「バラつき」の真因を特定することが、私の急務となりました。

 当初、私は二次情報に基づいて、いくつかの仮説を立てていました。「海外の工場では、作業員のスキルにムラがあるのではないか?」「日本から送られた製造機械のメンテナンスが、十分に行われていないのかもしれない」

 まずは、その部品を請け負っている日本のサプライヤー会社に向かいました。そこでの調査では、品質のバラつきに繋がるような明確な原因は見つかりません。そこで私は根本原因を探るべく、ベトナムに飛ぶことにしました。これもまた、「とにかく現地へ行け」というトヨタの不文律に則った行動でした。