写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
「トヨタ生産方式」や「カイゼン」といったトヨタ式の経営手法を導入しようとする企業は多い。だが、変革を実現するには「型」を真似るのではなく、本質を理解する必要がある。『最強トヨタの最高の教え方』(山本大平著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋・再編集。トヨタ出身の戦略コンサルタントが同社での経験を基に、変革をもたらす人材育成の要諦を説く。
複雑かつ変化の激しい時代にリーダーに求められる「知のブローカー」という役割と「戦略的ネットワーキング」とは?
なぜトヨタの「主査」は資料を持たずに仕事ができたのか?
『最強トヨタの最高の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)
この章では、あなたがリーダーとして、人材育成の際に持つべき「性質」についてお伝えします。
それはリーダーはすべてを把握する必要はない、むしろ「すべてを把握しようとしてはいけない」という性質です。私がそう考えるようになった原体験は、トヨタでのある出来事でした。
私がそう確信するようになったのは、経営者というリーダーになってからです。
経営者になり、「人をマネジメントするとはどういうことなのか?」と考え抜いた際に、トヨタでの出来事を思い返さざるをえなくなったのです。
まずは、トヨタでのエピソードをお伝えします。
私が若手だった頃、ある主査のチームの下で仕事をする機会がありました。その主査は「一匹狼」として知られ、特定の部下を持たず、たった一人で組織のあらゆる部署を横断しながらプロジェクトを支援していくという独特の仕事スタイルを持っていました。
私が衝撃を受けたのは、彼の「デスク」でした。部署の引っ越しを手伝うことになり、出張で不在の彼のデスクの引き出しを開けてみた私は、思わず息を呑みました。
そこには、ほとんど何も入っていなかったのです。
空っぽといってもいいほどでした。






