みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCHROの人見誠氏(撮影:冨田望)

 みずほフィナンシャルグループ(FG)は2024年度から、新人事制度「かなで」をグループ主要5社で本格稼働させた。従来の中央集権型人事を改め、社員一人一人の意志を起点にキャリア形成を支援する狙いだ。背景には2021年のシステム障害で揺らいだ組織の再生という課題もあるという。みずほFGはどのような人事施策を施し、現場はどう変わってきたのか。グループCHRO(最高人事責任者)の人見誠氏に聞いた。

「2000ピースのジグソーパズル」の限界

――みずほフィナンシャルグループでは、2024年度から新たな人事制度「かなで」へ完全移行しました。抜本的な人事制度改革に着手した経緯は何ですか。

人見誠氏(以下、敬称略) もともと、従来の人事の在り方を変えなければいけないという議論は、2010年代から起こっていました。金融を巡る環境が大きく変わり、ビジネスモデルの変革が急務となる中で、人事も当然変わるべきだという声が上がっていたのです。その声を受け、2019年には働き方改革の一環として副業を解禁するなど、制度をアップデートしました。

 ただ、この時点ではまだ銀行、証券などグループ各社で人事制度が別々に運用されており、2019年の制度改定の際には「将来的に一体化を検討すべき」という文言が付帯されていました。その課題の検討を進めているさなかに、2021年にあのシステム障害を起こしました。

※みずほ銀行のATM障害、窓口サービス停止、インターネットバンキング停止などのシステム障害が、2021年2月28日から短期間に複数回発生。複雑なシステム統合と設計・運用上の不備などのほか、ガバナンス(企業統治)の不備も根本的な課題として指摘された。

 一連の障害でお客さまや社会に多大なご迷惑をおかけしたことで、多くの社員が退職し、残った社員も元気をなくしてしまいました。下を向いてしまった社員たちを見て、「会社が一方的に引っ張る形では、もう誰もついてこない」と痛感したのです。