
株価が割安のまま放置されている企業に対し、企業価値の向上を迫る「アクティビスト(物言う株主)」。その多くは外国人投資家だ。東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことを受け、ここ数年、海外アクティビストの活動が活発化している。「株価を意識した経営」とは、いったいどのようなものか。本稿では、『アクティビストが日本株式市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』(菊地正俊著/日本実業出版社)から内容の一部を抜粋・再編集。資本効率の改善に成功している事例を取り上げ、今求められている経営の在り方を考える。
資本収益性が低ければ、資産運用会社は株主総会での議案に容赦なく反対する。PBR(株価純資産倍率)を1倍以上に引き上げるため、国内外の運用会社は議決権行使にあたりROE(自己資本利益率)に一定の基準を設けているが、その目標値はどこまで高まっているのか?
資本効率を重視した経営とは?

■ PBR1倍達成のためにはROE8%が必要
会社によって資本コストが異なるため、PBR1倍達成に必要とされるROE水準も異なりますが、平均値としては、PBR1倍達成のためには一般にROE8%が必要と考えられます。
しかし、多くの運用会社は取締役選任に反対するROE基準を5%に設定しています。たとえば、日本生命は資本収益性の水準が長期にわたり低迷(ROE5%未満が5期継続)しており、かつ本業の収益性についても業界のなかで長期にわたり劣後(営業利益が5期連続で業界平均以下)の場合を、取締役選任に関する議決権行使の精査要綱に挙げています。
一方、りそなアセットマネジメントは効率的な企業経営が行なわれていない企業(3年連続ROEが5%未満)のなかで、ネットキャッシュが過大またはROEが業種別で3年連続下位25%以下である企業の在任3年以上の代表取締役に反対するとしています。日本生命とりそなアセットマネジメントでROE5%基準は同じであるものの、日本生命が5期連続、りそなアセットマネジメントは3期連続と判断期間が異なります。
外資系運用会社は日系運用会社より議決権行使基準が厳しい傾向がありますが、ブラックロックは日系運用会社と同じく、ROE5%未満を取締役選任に反対する基準にしています。