写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 株価が割安のまま放置されている企業に対し、企業価値の向上を迫る「アクティビスト(物言う株主)」。その多くは外国人投資家だ。東京証券取引所が上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことを受け、ここ数年、海外アクティビストの活動が活発化している。「株価を意識した経営」とは、いったいどのようなものか。本稿では、『アクティビストが日本株式市場を大きく動かす 外国人投資家の思考法と儲け方』(菊地正俊著/日本実業出版社)から内容の一部を抜粋・再編集。資本効率の改善に成功している事例を取り上げ、今求められている経営の在り方を考える。

 東証が求める「資本コストや株価を意識した経営」に取り組み、投資家から評価されている企業も少なくない。ここではSWCCや長瀬産業の事例を紹介する。

中堅商社の資本コストや株価を意識した経営

 トランプ米国政権の誕生に伴う世界貿易の減速懸念を背景に、商社株は全般に軟調な展開になっています。大手商社はバークシャー・ハサウェイによる投資もあり、住友商事を除いてPBRは1倍を超えています。

 一方、中堅商社は内外機関投資家の注目度が低いため、PBR1倍達成に向けて、大手商社以上の経営努力および投資家へのアピールが必要でしょう。

 PBRが約0.9倍(2024年末時点)の長瀬産業の資本コストや株価を意識した経営は、2024年度中間決算説明資料に、2023年度期末の決算説明会資料を再掲しただけでしたが、2024~2025年度総還元性向100%に加えて、半導体・ライフサイエンス・フード等に絞った成長戦略が評価されて、株価は堅調に推移しました。

 長瀬産業は売上総利益の58%が商社事業、42%が製造業という製造業を兼ねた商社であり、セグメント別の売上は生活関連が37%、電子・エネルギーが21%を占めます。