写真提供:共同通信社
多様な知を融合し、価値観・考え方・やり方を柔軟に変えていく――その日本人らしい特性こそ、再び世界で輝く鍵になる。日米の研究者が105社のトップにインタビューし、新たなリーダーシップと経営革新の深層を探った話題書『ジャパン・ウェイ』(池上重輔著・監訳/ハビール・シン、マイケル・ユシーム著/渡部典子訳/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集。企業文化をどう変え、日本企業をどう再生するか、そのヒントを探る。
2011年の7700億円の赤字を機に、事業の専鋭化と再編を進めたパナソニック。激化する競争下で、どう収益構造の転換を図ろうとしているのか。社長2代、津賀一宏氏と楠見雄規氏が進めた構造改革の軌跡をたどる。
パナソニック――両利きの経営実践に挑んだ2人のトップ
『ジャパン・ウェイ』(日経BP 日本経済新聞出版)
両利きの経営マインドを持つトップの影響力をさらに理解するためパナソニックを見てみよう。特に際立っていたのが、2人のトップエグゼクティブが忍耐強く、両利きの経営の実行に継続的に取り組んでいることである。
1人目は活用と進化の両立をリードしようとしたが、パナソニックの長年の企業文化があまりに根強く、その試みは完全には実を結ばなかった。そして、2人目の経営者は、前任者が築いた土台を活かしながら、慎重かつ大胆に全体の事業ポートフォリオを再構築している。前任者は両利きの経営の基礎をつくり、後任者がそれを形にしつつあるのだ。
松下電器産業は松下幸之助氏が1918年に電球ソケットの製造会社として創業し、20世紀末に世界最大の家電メーカーとなった。2008年にパナソニックに社名変更し、アビオニクス(航空電子機器)やエレクトロニクスから住宅建設やリフォームまで幅広い市場に進出した。主力製品部門は非常に大規模でかつ多角化していたので、同時期のゼネラル・エレクトリック(GE)の航空、ヘルスケア、エネルギー部門のようだった。GEの場合、2020年代初めにそうした巨大事業部が本体から切り離され、アメリカではそれぞれ独立企業となっている。
パナソニックは世界的なエレクトロニクス企業としての成功だけでなく、創業者の経営哲学でもよく知られるようになった。松下幸之助氏によると、ライフスタイルを豊かにし、家事労働を軽減し、最終的に「社会生活の改善向上と世界文化の進展に寄与する」ために創設された会社だ。







