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多様な知を融合し、価値観・考え方・やり方を柔軟に変えていく――その日本人らしい特性こそ、再び世界で輝く鍵になる。日米の研究者が105社のトップにインタビューし、新たなリーダーシップと経営革新の深層を探った話題書『ジャパン・ウェイ』(池上重輔著・監訳/ハビール・シン、マイケル・ユシーム著/渡部典子訳/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋・再編集。企業文化をどう変え、日本企業をどう再生するか、そのヒントを探る。
次々とカテゴリーキラーが台頭する中、独自の哲学を貫き、世界的なブランドへ成長した良品計画の経営の本質とは?
良品計画――“芯”を残しつつ変化に適合
『ジャパン・ウェイ』(日経BP 日本経済新聞出版)
1980年代の日本企業の未曾有の成功は、消費財産業における豊かさ、贅沢さ、さらには過剰な需要までもたらした。しかし、1990年代初めにバブルがはじけると、高級消費財市場は低迷した。
その少し前の1980年に、スーパーマーケットの西友はさまざまな消費財のプライベートブランド「無印良品」を誕生させ、1989年に良品計画を立ち上げた。西友を基幹に持つセゾングループのオーナー兼CEOの堤清二氏は、広く浸透していた流通業界の常識に挑戦した。
堤氏はJTC(伝統的な日本式経営)モデルを捨て去る際に「流通業の本質は資本の論理と人間の論理の境界線にある」と主張した。消費財を売るには金融資本と人的資本のバランスをより公平にとる必要があるとし、「本質的なシンプルさの美学」を強く打ち出した。つまり、周りのデザインよりも、製品そのもので勝負すべきだと考えた。また、顧客との形式的で距離のある関係から脱し、製品に対する顧客個人の嗜好や美意識を積極的に受け入れるように会社を変えていった。
当時の企業は中身と同じくらいパッケージや見た目を重視していた。中身が何であれ不格好な器では消費者に敬遠されるという前提で、形の良い商品を提供していたのだ。堤氏はそうした「外側」のデザインから「内側」の本質を引き出す方向へ変わるように命じた。
そこでシンプルで機能的なパッケージを提案したところ、消費者の新たな関心事となった。堤氏はすぐにそのコンセプトをアパレルにも拡大した。こうして無印良品はある種の「ノーブランドというブランド」となったのである【注9】。
9 Kanai, 2018.







