写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 輸送、倉庫での荷物の保管など、荷主企業の物流業務を幅広く受託する「3PL」(サードパーティーロジスティクス)。市場が拡大し存在感が高まる一方で、各社の経営環境、競争環境は厳しさを増しつつある。その中で、今注目すべき企業はどこか。今後の見通しは?

 物流メディア「ロジビズ・オンライン」編集長、『月刊ロジスティクス・ビジネス』副編集長の藤原秀行氏に聞いた。

「3PL」の売上高ランキング上位企業は?

――先ごろ『月刊ロジスティクス・ビジネス』の誌面で「3PL白書 2024」が発表されました。そもそも「3PL」(サードパーティーロジスティクス)とはどのような物流企業を指すのでしょうか。

【月刊ロジスティクス・ビジネス】

2001年に創刊したロジスティクス管理の専門誌。 一般経済紙よりも深く、物流業界紙よりも広い視野から、独自のビジネス情報を発信。

藤原秀行氏(以下敬称略) 実は法律などで明確に定義されているわけではなく、弊誌にも明文化した定義はありません。単純な運送、保管、出荷にとどまらず、いかに物流を効率化していくかという戦略の提案まで請け負い、現場をちゃんと回せている企業が「3PL」だと、われわれは考えています。

――市場環境はどのように変化していますか。

藤原 3PL市場は拡大の一途をたどっています。これだけ成長を続けているマーケットは珍しいのではないでしょうか。需要は旺盛で、2024年も市場は拡大しています。

 ただその一方で経営環境は厳しくなりつつあります。3期連続で全体の増収率が悪化し、約4割の企業が減収になったのも、その表れと考えられます。新型コロナの収束でワクチンなど医療関係の物流量が減少したこと、物価上昇で個人消費に影響が出て、EC(電子商取引)の伸びが鈍化していることなどがその背景にあると見られます。

 トラックなどの輸送費や人件費が上昇し、そこをうまくコントロールできないと、経営的に厳しくなってしまいます。競争の激化も経営環境の厳しさを増している要因の一つです。

 もちろんそうした中でも、しっかり売上を増やしている企業はあります。売上高ランキング上位4社のロジスティード、センコーホールディングス(HD)、郵船ロジスティクス、SBSホールディングス(HD)は、いずれも前年度より売上を伸ばしています。

 これらの企業に共通しているのは、対応力の幅が広いということです。端的に言えば、顧客の多様な要求に対応できる体制を整えているのです。例えば、顧客が環境対応を重視してトラックによる輸送を鉄道輸送に切り替えてほしいと要望すれば、すぐにモーダルシフトを実施するというようなことです。

 ますます高度化・多様化してきている荷主の要求にも、きちんと対応できている企業は、厳しい環境下でも手堅く収益を確保できていると言えます。

――顧客の要求に幅広く対応できている企業とできていない企業とでは、何が違うのですか。