国土交通省 物流・自動車局 物流政策課 課長 紺野博行氏(撮影:酒井俊春)
2024年4月、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間までに制限され、「物流の2024年問題」として輸送力の不足が懸念されてきた。それから1年。政府主導で進められたさまざまな対策は、果たして成功したのか。そして、残る課題は何か。国土交通省で政策パッケージの取りまとめにあたったキーパーソンが、事業者、荷主を含め日本の物流革新に必要な理解と意識、行動の見直しを語る。
「物流革新に向けた政策パッケージ」はいかにして生まれたか
――働き方改革関連法が施行され、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されてから約1年が経ちました。政府は2023年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」、その後「物流革新緊急パッケージ」を発表するなど、対策を加速させてきました。これらの政策はどのような議論を経て作られたのですか。
紺野博行氏(以下、敬称略) まず、2023年に政策パッケージをまとめた背景ですが、物流業界は深刻な人手不足に見舞われており、当時の試算で、何も対策をしなければ2023年に14%、2030年に34%の輸送能力が不足する可能性があるとされました。
社会を支えるインフラとしての物流を守るために、政府として包括的な対策を打たなければいけないということで進めたのが、2つのパッケージです。
コロナ禍を経て、EC(電子商取引)の急増はあるものの、BtoC(個人向け)の輸送量は物流全体の10%程度にとどまっています。物流の課題は、主にBtoB(法人向け)と考えていいのですが、当時、国土交通省では、2024年問題を前にして、物流事業者だけでは解決できないと考えていました。特に、荷物の運送を依頼する企業(荷主)の理解と行動変容が不可欠です。
その意味で大きな契機となったのが、2023年3月に政府官邸で開かれた「物流革新に関する関係閣僚会議」でした。






