物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。
第12回からは4回にわたり、日清食品常務取締役事業統括本部長兼Well-being推進部長で、フィジカルインターネットセンターの理事を務める深井雅裕氏を迎えた特別対談をお届けする。
2026年度までに一定規模以上の事業者に設置が義務付けられることになった「物流統括管理者」が大きな注目を集める一方、これと「CLO」(最高ロジスティクス責任者)を等置する考え方には多くの反論もなされている。実際のところ、どうなのか? 本編の「あるべきCLOの姿」を巡る熱い議論の中で、徐々に明らかにしていく。
物流と地球社会の持続可能化=サステナブル化のため、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく。
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「CLOに求められる要件」をJPICが提言
菊田 今回の「物流ミライ妄想館」は少々趣向を変え、今、物流関連分野で大注目のテーマである、「物流統括管理者」と「CLO(Chief Logistics Officer、最高ロジスティクス責任者)」にスポットを当てた、スぺシャルインタビューを4回連載でお送りします。
ゲストに迎えたのは、日清食品常務取締役で営業本部およびサプライチェーン本部を統括する事業統括本部長他を務めるとともに、フィジカルインターネットセンター(JPIC)の理事である、深井雅裕さん。深井さんは日本の産業界ではまれなことにCLO的な職責を果たし、JPICのCLO職能検討会がこの7月に発表した提言「物流革新実現に向けてCLO に求められる要件」策定の、中心者の1人としても活躍しました。深井さん、今日はよろしくお願いします!
深井雅裕氏(以下・敬称略) こちらこそ!
菊田 さて、今申し上げたように「物流統括管理者」と「CLO」がちまたで大変な話題になっている理由は、政府が新・物流2法と呼ばれる「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法/物効法)」と「貨物自動車運送事業法」の改正を2024年2月に閣議決定の上、5月に公布したことです。
内容をご存じの読者も多いとは思いますが、簡単におさらいしますね。新・物流2法の最大の特徴は、荷主と物流事業者の双方に対し、物流効率化への取り組みを「義務」と定め、罰則までを法制化したこと。
荷待ち・荷役時間の短縮(1運行あたり2時間以下ルール)など効率化計画の作成・報告義務付け、1運行ごとの貨物量増加、多重下請け構造の是正に向け元請業者に実運送体制管理簿の作成義務付け……等々の規制的措置が網羅されたのは、「物流2024年問題」起点の物流クライシスへの政府の強い危機感を表しています。
中でも今回注目するのは、改正物効法で特定荷主(年間取扱貨物重量が9万トン以上、国内の上位3200社程度が該当する見込み)に対し、「役員クラスの物流統括管理者の選任」が義務付けられたこと。本項は2025年度に施行され、2026年度に対応が求められる方向です。
でもそんな役職名はこれまで国内では前例がほぼなく、「ええっ! 物流統括管理者って?(聞いたことないし)、一体、何をどこまでするの?」といった反応もあるようです。
深井 その通りです。戸惑っている企業が多いみたいですよ。
菊田 それともう1つの重要な論点が、「物流統括管理者は、CLOなのか?」という疑問です。法律に「CLO」の表記は皆無ですが、政府の担当幹部が文書で「物流統括管理者(CLO)」と表記したことで、「物流統括管理者=CLO」との理解が関係者の中で浸透しかけています。私としては定義上、その表現には異論があるので他のコラム等で指摘してきましたが、その是非を含め、今回は徹底的に聞きたいと思います。