ヤマハ デザイン研究所所長の川田学氏(撮影:川口紘)

 ピアノやギターなどの楽器にはじまり音響機器やゴルフ用品まで幅広い製品を扱うヤマハ。同社の企業ロゴは一時期いくつかの表記パターンが存在していたが、2010年頃から1つのパターンへ集約を進めた。一方で、現在同社の製品に刻印されているロゴを見ると、いくつかのパターンが見受けられる。こちらはあえて統一せず、楽器などによって戦略的に表記を使い分けているという。その狙いはどこにあるのか。創業130年を超えるヤマハ、同社のロゴの歴史を追っていく。

会社設立の翌年には「音叉(おんさ)」がシンボルに

 ヤマハのロゴは現在、三本の音叉を表した「音叉マーク」と「YAMAHA」の文字を組み合わせたものが使われている。「三本の音叉は技術・製造・販売の三部門の強い協力体制を表しています。また、それぞれの音叉が矢のように外側に向かって伸びているのは、音や音楽を中心に世界に伸びてゆくヤマハの生命力を表現しています」。同社のデザインを統括するヤマハ デザイン研究所所長の川田学氏は、ロゴに込められた意味をこう説明する。

 音叉をモチーフにしたこのデザインは、どういった経緯で生まれたのだろうか。話は創業当初にまでさかのぼる。

 同社の創業は1887年、その道のりは幕を開けた。 創業者の山葉寅楠(とらくす)は幼い頃から西洋の科学技術に親しみ、当時普及し始めていた時計の製作や、医療機器の修理などを行っていたという。

 会社創業のきっかけは、ある時山葉がその技術を買われ、小学校からオルガンの修理を依頼されたこと。無事に修理を終えると、ここにビジネスの可能性を感じて自らオルガンを作り始めた。これが契機となり、1897年の「日本楽器製造株式会社」の設立につながっていく。