ヤマハ発動機が2019年からDX施策を本格化している。Y-DX1 デジタルによる経営基盤改革、Y-DX2 既存ビジネスの強化を実施しながら、Y-DX3「未来を創る」活動に着手。2023年末からは黒島(長崎県佐世保市)を舞台に「離島プロジェクト」をスタートし、グリーンスローモビリティ(公道仕様の電動カート)や電動車いすを活用した島民や観光客向け新サービスの開発に取り組む。ヤマハ発動機IT本部フェローの三宅貴浩氏に、ヤマハ発動機のDXの現在地、離島プロジェクトの狙いなどについて話を聞いた。
今後必要となる考え方や基盤、プロセス、人材を網羅するプロジェクトを次々に立ち上げ
――ヤマハ発動機がDXの必要性を認識し取り組みを始めたのはいつごろからなのでしょうか。
三宅 当社では2018年ごろから、DXに取り組む必要性を認識し、取り組みを始めています。2019年にはDX推進の3本柱を策定しました。Y-DX1では「経営基盤の改革」、Y-DX2 は「デジタルによる既存ビジネスの強化」、Y-DX3は「未来を創る」を掲げています。
私が入社する前の3年間は、Y-DX1とY-DX2を中心に取り組んでいました。多事業・多拠点のヤマハ発動機にとって、業務プロセスの標準化やERP導入は大きな課題でした。Y-DX2では、デジタルマーケティング、データ活用人材の育成やデータ分析を通じた生産・開発現場の改善などに注力してきました。
一方、「未来を創る」と定義のあいまいなY-DX3については、Y-DX1とY-DX2 の取り組みに対して優先度が上がらず、着手できずにいました。私自身、入社後にY-DX3の最初の一歩を顧客との関係性を紡ぐデジタルサービスを実施することと定義し、それに向けて取り組み始めたというのが実情です。
――DXを推進するためにどのような組織体制を敷いていますか。
三宅 中核となるのはIT本部傘下のデジタル戦略部とプロセスIT部です。DXの全体戦略の策定や人材育成を行いながら、業務改革全般やそれに必要なシステム導入、さらに事業におけるデジタルマーケティングやコネクテッドの推進など、DX推進の CoE(センターオブエクセレンス)として司令塔の役割を果たしています。
一方、ユーザ部門となる各事業部にも、デジタル領域をドライブできるよう適切な人材を配置してもらい、IT本部と連携しながら、事業部に即したDX施策を実行しています。
さらに経営層も巻き込んだDX推進の会議体を設け、デジタル領域で特に発生しやすい事業部を横断するような重要案件の意思決定を行っています。このように、現場と経営の両面からDXを推進する体制を整えています。