ペーパーレス化という流れの中で、複合機やプリンターなどの市場は徐々に縮小の方向に向かっている。これを加速したのがコロナ禍である。ビジネスの未来像を描きにくい中で、リコーと東芝は合弁会社を設立。富士フイルムビジネスイノベーション(BI)とコニカミノルタは提携に向けた協議を進めている。日本企業が圧倒的な強みを見せてきた複合機市場だが、今後の合従連衡も十分考えられる。
複合機メーカーの今後の戦略についてフーリハン・ローキーのマネージングディレクター吉村尚氏に聞いた。
コロナ禍を経て顕在化したアライアンスの動き
2024年7月、リコーと東芝テックは合弁で「ETRIA(エトリア)」を設立する。複合機の開発・生産部門を統合し、経営効率向上を図る。エトリアへの出資比率はリコー85%、東芝テック15%である。
複合機やプリンターなどの分野は、今、大きな曲がり角にある。主要プレーヤーの一角を占める富士フイルムとコニカミノルタは、複合機・プリンター分野での業務提携に向けた協議を行っている。提携の対象は調達で、原材料や部材の調達を担う合弁会社設立を含めた協議が進行中。富士フイルムグループの富士フイルムビジネスイノベーション(BI)が、合弁会社の株式の過半を持つことになりそうだ。
いずれの組み合わせにも、販売やマーケティングなどの機能は含まれない。ただ、一部の機能とはいえ、相次ぐアライアンスの動きは注目される。フーリハン・ローキーの吉村尚氏はこう語る。
「短期的にはアップダウンがありますが、複合機の世界市場が長期的にシュリンクすることは避けられないでしょう。従前から言われているペーパーレス化というトレンドもありますが、コロナ禍を経て働き方やオフィスの在り方が変わったことも大きい。コロナ禍が変化を加速した形です。
縮小市場でのビジネスの形について、各社とも以前から検討していたはずですが、最近になって水面下の動きが顕在化したということでしょう」
「リコー+東芝テック」と「富士フイルムBI+コニカミノルタ」、これらの提携が将来的に経営統合に進むかどうかは見通しにくい。複合機という製品の構造について、吉村氏は次のように説明する。
「複合機は極めて複雑な製品です。メカトロニクスや光学系、ソフトウエアに加えて、トナーでは化学系の技術やノウハウなどが求められ、さまざまなところに独自の技術が入っています。それらの技術をすり合わせて製品が進化してきたので、仮に経営統合した場合には、基本的には一方の技術に寄せる形にせざるを得ないと思います。プロダクトそのものについて大きなシナジーは期待しにくいでしょう」
開発・生産機能を担うエトリアの新製品は、いずれ株式の85%を持つリコーの技術へと収斂(しゅうれん)することになるのかもしれない。