日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 創業92年を迎えるオムロンは、企業理念経営、サステナビリティ経営を実践する企業として知られる。原点となるのは、創業者が制定した「社憲」である。その歴史と実践のための企業理念経営、コア技術である「センシング&コントロール+Think」を生かし持続可能な成長を実現する仕組みについて、同社執行役員常務の井垣勉氏に聞いた。

サステナビリティ経営の基盤にある「社憲」とは

――オムロンは、サステナビリティの精神を企業理念として長年にわたり守り続けているそうですが、どういった経緯でそうなったのですか。

井垣勉氏(以下・敬称略) 1933年に立石一真が「立石電機製作所」として創業したオムロンは、立石自身が1959年に策定した会社の憲法である「社憲」を、現在でも経営の最も重要な精神として掲げています。

 その内容は、「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」というものです。ここでいう「われわれ」とは、自社の社員だけではなく、社会の人々全体を指しています。つまり「全てのステークホルダー」ということです。当社はこの社憲を、オムロンがどのような企業体になろうとも不変な価値観であり、存在意義であると考えています。

 もちろん、世の中は変化していきます。そこで、時代ごとの会社の状況、社会課題を織り込んで、この社憲の精神を発揮していくために当社はどう変わらなければいけないかを考えるのが、その時代の経営の役目になります。

企業理念を「額縁の中の言葉」にしない経営

――老舗企業の中には、創業者などが掲げた企業理念が形骸化して、社長室の壁に掛かった額縁の中に書かれてあるだけで、社員はほとんど覚えていないケースも少なくありません。オムロンが全社に企業理念を浸透させることに成功している理由は何でしょうか。