ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長の不動奈緒美氏(撮影:宮崎訓幸)

 スウェーデンの高級車大手ボルボ・カーズが、サステナビリティの取り組みを加速させている。2030年までに同社が提供する全ての新車を電気自動車(EV)にすることを発表。 同社のサステナビリティ経営に向けた戦略とそれを支える理念、日本における取り組みなどについて、ボルボ・カー・ジャパン社長の不動奈緒美氏に話を聞いた。

サステナビリティ経営の背景にあるパーパス・オリエンテッドな企業風土

——脱炭素化の世界的な潮流を背景に、自動車業界は大きな転換点を迎えています。そんな中、ボルボをはじめとする欧州の自動車各社は、気候変動や生物多様性などの分野で、アグレッシブなビジョンや目標を掲げている印象があります。その要因や原動力はどこにあると考えていますか。

不動 奈緒美/ボルボ・カー・ジャパン 代表取締役社長

北海道出身。1991年、米国メアリービル大学卒業。アクサ生命保険、マニュライフ生命保険などを経て、2021年5月、ボルボ・カー・ジャパン入社。ダイレクトトゥーコンシューマーオペレーションズ本部長などを経て2023年8月より現職。同社では初の女性社長となる。

不動奈緒美氏(以下敬称略) 単に環境意識が高いというよりも、自社の理念や存在意義(パーパス)に立脚した経営が深く根付いており、あらゆる事業活動でそれを徹底して追求する中で、ごく自然に脱炭素や気候変動対応などに行き着いたという企業が多いのだと思います。ボルボのサステナビリティ経営も、まさに創業以来の理念を徹底することから始まっています。

 ボルボは1927年、われわれが住む世界と、われわれの周りの人々を大切にすることを使命として誕生しました。それ以来、約100年にわたる長い歴史の中で、常に「人」をビジネスの中心に据え、人が安心・安全に暮らすとはどういうことなのか、事業を通じて徹底して追求してきました。

 自動車メーカーとしてクルマの安全性に配慮するのは当然ですが、クルマに乗っていない時間も含めて、ボルボが関わる全ての人々に安全を約束するには、生活を支えている環境全体を安全に保つ必要があります。この考えに基づき、サステナビリティ経営という言葉が注目されるはるか以前から、ボルボは地球環境に与える影響を最小限に抑える経営に取り組んできました。

 この経営姿勢がグループ全体に早くから浸透していたことを示すエピソードとして、私がよくお話しするのが、1990年5月17日の「日本経済新聞」に掲載した大規模な企業広告です。

広告会社:コモンズ株式会社
拡大画像表示

 ここで掲げた「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」というキャッチコピーは、まだ現在ほど環境意識が浸透していなかった当時としては非常に画期的なものでした。われわれが作る自動車が環境負荷を与える存在であることを認めた上で、製品の安全性だけでなく、環境に対しても責任を果たしていくという強い決意を示したのです。

 この思いは現在に至るまで、日本だけでなく世界各国の拠点に浸透し、あらゆる事業活動において徹底されています。