富士通が自ら「DX企業」に進化することを目標に掲げる中、営業部門の変革も進めている。「従来とは異なる売り先」へ顧客層を広げるために、どのような取り組みを進めているのか──。2024年8月、書籍『富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法』(翔泳社)を出版した富士通カスタマーグロース戦略室の友廣啓爾氏に、同社が進める営業DX推進の舞台裏について聞いた。(前編/全2回)
営業DXの遅れを招く「先発完投型の営業スタイル」
──著書『富士通式! 営業のデジタルシフト カルチャーを変え、売上の壁を超える方法』では、富士通のデジタルセールスチームを題材として営業部門のDXについて解説しています。チーム立ち上げの背景には、どのような組織課題があったのでしょうか。
友廣啓爾氏(以下敬称略) 私が入社した当時、富士通は「モノ売りからコト売り」へのシフトを更に推進している時期でした。これは、顧客企業の情報システム部門の発注に応じて製品を納品する「モノ売り」主体の営業から、LoB(Line of Business)と呼ばれる事業部門のニーズを察知し、提案型でソリューションを提供する「コト売り」主体の営業への転換を意味します。
しかし、私たちがデジタルセールスチームを立ち上げる際に営業担当者を対象として実施したアンケートでは、「既存顧客のフォローで手一杯」「新規顧客の開拓ができない」といった課題が多く挙がり、変革は難航していました。
このような状況に陥る背景にあったのが「先発完投型の営業スタイル」です。先発完投型とは、特定の顧客を一人の営業担当者が専属的、かつ長期的に担当する営業スタイルを指します。これは富士通に限らず、日本企業の多くで見られる現象で、営業DXの遅れを招く要因の一つです。
なぜ、先発完投型の営業スタイルが課題なのかというと、生産性が低く、業務効率も悪いからです。