Sustainable Shared Transport代表取締役社長 髙野茂幸氏(撮影:宮崎訓幸)

 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 今回は、ヤマトグループが設立した共同輸配送のオープンプラットフォーム運営会社Sustainable Shared Transport(SST)の髙野茂幸社長をゲストに迎える。日本のフィジカルインターネット実現に向けた構想とは?

「スマート物流」の流れの上に

菊田 今回は、ヤマトグループが設立した共同輸配送のオープンプラットフォーム運営会社、Sustainable Shared Transport(SST)の髙野茂幸社長をゲストに迎えました。私自身は、この取り組みを旧ヤマトグループ総合研究所(旧ヤマト総研)が以前普及に努めていた「フィジカルインターネット」実現への具体的ステップではないかと捉え、注目してきました。

 2022年には旧ヤマト総研を母体として一般社団法人フィジカルインターネットセンター(JPIC)が設立され、現在はさまざまな企業が参画するフィジカルインターネットの推進組織となっています。

 周知の通りフィジカルインターネットとは、モノと情報とプロセスの標準化により究極の物流共同化を目指す構想で、政府は2040年までに日本で現実化する、との目標を示すロードマップを発表しています。

 私はSSTがJPICと連携しつつ、日本のフィジカルインターネット現実化をけん引してくれるものと期待しているのです。まず初めに、そうしたSST設立の経緯と、そこにヤマトグループが込めた思いはどのようなものだったのでしょうか。

髙野茂幸氏(以下、敬称略) 当社の設立に至った背景は、大きく2点あります。

 一つは2018年、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の「スマート物流サービス」プロジェクトに、ヤマトホールディングス(HD)常務執行役員の田中従雅(役職は2018年当時、2024年からSST取締役)がプログラムディレクターとして参画したことです。