Sustainable Shared Transport代表取締役社長 髙野茂幸氏(撮影:宮崎訓幸)

 物流と地球社会を持続可能にするために、今何が必要なのか。デジタル先端技術から経営戦略まで、世の誤解・曲解・珍解を物流ジャーナリスト・菊田一郎氏が妄想力で切りさばく連載企画。

 今回は、ヤマトグループが設立した共同輸配送のオープンプラットフォーム運営会社Sustainable Shared Transport(SST)の髙野茂幸社長をゲストに迎える。「JR貨物のトラック版」のような定時運行便で目指す持続可能な物流、富士通との業種を超えたデータ連携などを通じたフィジカルインターネット実現のための戦略とは?

定時運行路線を18本から全国に拡大

菊田 Sustainable Shared Transport(SST)は、物流効率化と持続可能なサプライチェーン構築に向け、共同輸配送サービス「SST便」を提供しています。定時運行の路線ですが、現在はどれほど運行していますか?

髙野茂幸氏(以下、敬称略) 2025年3月の時点では、全国で18路線を走らせています(図表1)。2025年度の早い時期には全国40線便をマルチモーダルで実現する計画です。需給状況によりダイヤは調整しますが、ニーズがあればどんどん増やしていきたい。例えば北海道、北陸はまだなので、早く拡張したいと思っています。

        図表1 現在のSST便提供エリアとネットワーク展開のイメージ

 図中の中継地でドライバーは交代するので、日帰りで運行することができます。この点にはこだわっていて、ドライバーの労働環境を改善しないと、物流は持続可能になりません。

 幹線輸送についてはダブル連結トラックやセミトレーラーなど、より大きな車両の利用も考えています。大型車両での輸送を得意とする運送事業者に参加していただこうと、大手も含め各方面と話しているところです。

 一方、拠点から到着地までの域内配送については、地域の運送事業者との連携を深めていく考えで、中小運送事業者の組合組織などを通じてローカルパートナーを探しています。

菊田 それは、地域社会の活性化にもつながりますね。私は中小運送事業者も小規模のままでなく、まとまっていかないと生き残りが難しい時代だと訴えています。

髙野 おっしゃる通りで、むしろ中小運送事業者の連携による生産性向上に力を入れ、地域社会に貢献したいと思っているんです。