消費者心理分析専門家、イー・クオーレ代表取締役の犬飼 江梨子(撮影:榊水麗)

「モノが売れない時代」になったと言われて久しい。少子高齢化、市場の成熟化などに加えて、消費者の志向が多様化、細分化したことも大きな要因とされるが、消費者心理分析専門家の犬飼江梨子氏は「消費者のニーズは調査によって掘り起こすことが可能」と語る。その消費者調査のメソッドを体系化したのが、2024年11月出版の著書『「消費者ニーズ」の解像度を高める』(フォレスト出版)だ。同氏に、無意識下に潜む消費者の感情を浮かび上がらせ、売り方の「勝ち筋」見いだすポイントを聞いた。

マーケティングリサーチの基礎を一冊に凝縮

――『「消費者ニーズ」の解像度を高める』は、マーケティングリサーチの基本的なメソッドを網羅的にカバーしている印象を受けました。

犬飼江梨子氏(以下敬称略) そう言っていただけるのは嬉しいですね。おっしゃるとおり、私がマーケティングリサーチャーとしてこれまで積み上げてきた、消費者の本質的なニーズを発見する「ニーズ・ファインディング・メソッド」をこの一冊に集約しました。これを読めば、リサーチャーが何を考えて調査や分析をしているのかがおおよそ理解できる内容になっています。

犬飼 江梨子『「消費者ニーズ」の解像度を高める』(フォレスト出版)

――あえて、ご自身のリサーチャーとしての「手の内」を明かそうと思ったのはなぜですか。

犬飼 私自身この世界に20年近く携わっているのですが、以前は各メーカーに熟練のマーケターがたくさんいました。ところが、ここ10年でジョブローテーションのサイクルが短くなり、若いマーケターが増えた印象を持っています。メーカーの側からも「マーケティングリサーチの基礎を教えてほしい」といった要望が高まっています。それなら、キャリアの浅いマーケター向けに、マーケティングリサーチの基礎を提供しようと考えたのが出版の動機です。

 また本書を出版したことで、私がどういう意図でリサーチを設計しているのかを理解してもらいやすくもなり、仕事が効率的にもなっています。本書を読んだクライアントからは「犬飼さんが何を考えて調査の設計をしているのかよく分かりました」「初めにヘビーユーザーからインタビューするのにはそういう理由があるんですね」といった反響をいただいています。