かつては個人向けPCや半導体、スマートフォンなど、幅広い領域でビジネスを展開していたNEC。同社は2000年代以降、厳しい業績低迷を理由に、これらの看板事業を含めて全体の2分の1の事業を整理する大きな経営改革を進めてきた。それによって業績は回復し、ここ数年は過去最高益を達成するまでになっている(※調整後営業利益ベース)。この復活をけん引する事業が、現在、同社の中核を成しているDX事業だ。NECの経営改革の道のり、そしてDX事業における強みについて、同社の森田隆之社長に聞いた。
改革をしなければ企業としての存続が危うかった
――NECはかつてと事業構造が大きく変わり、DX事業が主体の会社になりつつあります。なぜこれほどの経営改革を進めたのでしょうか。
森田隆之氏(以下敬称略) 最も大きな理由は、NECが倒産するかもしれないほどの経営危機に直面したことでした。戦略的に経営改革を実行したというよりは、やらなければ企業として存続できない状態だったというのが正直なところです。
1990年代以降、NECは通信・コンピュータ・半導体の分野でそれぞれ世界上位のポジションに位置し、2000年度には売り上げが5兆円を超えました。株価も堅調に推移し、当社の経営は1つのピークを迎えていたと言えます。しかしその裏では、各事業の市場がグローバルへと急速に広がり、勝つために必要な資本も同じ速度で膨らんでいました。
これにより、一企業が各事業でトップを継続するための事業資金や投資サイクルが十分に確保できなくなっていたのです。こうした中でITバブル崩壊やリーマン・ショックが起き、その波に飲まれる形で当社のキャッシュは非常に厳しい状況になりました。