
旭化成では「抜本的な事業構造の転換」を掲げ、複数の事業譲渡を敢行するとともに、次世代の成長をけん引する10の事業領域を定めて積極的な投資を進めている。多角的な事業を展開する同社にとって、事業ポートフォリオの転換はいつの時代も行われてきたが、その中でも今回“抜本的”とまで言い切る理由はどこにあるのか。旭化成 代表取締役社長の工藤幸四郎氏に聞いた。
大胆な改革をやり切る決意
――旭化成は「2030年に目指す姿」に向けて各セグメントで事業構造の転換を進めています。今回の事業構造の転換に至る背景は何だったのでしょうか。
工藤幸四郎氏(以下敬称略) きっかけは2022年度の業績不振です。2021年度は比較的良い業績でしたが、2022年度上期の中頃から民生用のスマホ・PCの半導体需要が激減するなどし、また買収した米国ポリポア社の減損損失を計上したことから20年ぶりの最終赤字を経験しました。経営者としてもスピーディーな対応ができなかったと反省しています。
この状況が契機となり、大胆な改革が必要だと考えました。多様な事業を保有する当社では、各事業へのリソースのアロケーション(配分)こそが経営の肝であり、時代の中で細かく変容させてきた歴史があります。将来の旭化成を担う社員のためにも、事業構造の転換を進めることにしたのです。
改革を行う上では、3年ほどの短期で行う施策と、それ以上の中長期で行う施策に時間軸を分けました。まず短期の施策として、成長性などの観点から複数の事業譲渡や撤収、工場の閉鎖などを行いました。さらに今後計画しているものも複数あります。