2021年に日本の自動車部品メーカー4社が経営統合する形で生まれた「日立Astemo(アステモ)」(2025年4月からは「Astemo」に社名変更予定)。自動車のシステム化が進む中、パワートレイン、サスペンション、センシング、自動運転など、自動車に必要な多くの要素を網羅する日立Astemoは、どのような独自の価値を生み出そうとしているのか。同社が自動車メーカーに向けて行った最新技術発表イベントの模様を、自動車ライターの大谷達也氏がリポートする。

日産系とホンダ系の連合部品メーカー

 日立Astemoは、2021年に設立されたばかりの“若い”自動車関連部品メーカーだ。

 もっとも、同社は日立オートモーティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して誕生したもので、4社はそれぞれ1930年代ないし1950年代に創業したという長い伝統を誇っている。

 ちなみに、日立オートモーティブシステムズはサスペンションダンパーや電装品に始まって近年はハイブリッドシステムなども生産。ケーヒンはキャブレターに始まってエンジンの燃料供給システム関連などを手掛けてきた。またショーワはサスペンションダンパーを皮切りにステアリング系や駆動系パーツを、日信工業はブレーキ関連部品の開発と生産を得意とするといった特色を備えている。

 もう1つ特徴的なのは、日立オートモーティブシステムズはどちらかといえば日産自動車と縁の深い企業で、残るケーヒン、ショーワ、日信工業はホンダが主要な取引先と、自動車メーカー間の壁を越えた経営統合だったことにある。したがって、もとを正せば異なる系列の企業だったといっても語弊はないだろう。

 では、出自の違う4社がどうして経営統合することになったのか? その背景には、現在の自動車産業界が抱えるさまざまな事情が関係しているといってよさそうだ。