アレグロマイクロシステムズ 取締役会会長の鈴木善博氏
磁気センサーの市場で世界シェアトップの米アレグロマイクロシステムズ。ナスダックにも上場している同社において、取締役会会長を長年務めてきたのが鈴木善博氏(2025年8月から取締役および名誉取締役会会長)だ。なぜ日本人が米上場企業の取締役会をリードすることになったのか。ステークホルダーの要求が厳しいアメリカにおいて、どのように運営体制を築いてきたのか。日本企業がいかに世界と伍していくのかをテーマとする本連載の特別編として、経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会(※)」の座長を務めた日置圭介氏とともに、米国企業の取締役会運営に迫った。
※ CX=コーポレートトランスフォーメーション:企業変革
アメリカ企業の取締役会を統括している理由
――鈴木さんは長らくアレグロマイクロシステムズ(以下、アレグロ)の取締役会会長を務めていましたが、そもそもどのような経緯で就任したのでしょうか。
鈴木善博氏(以下敬称略) 私はもともと、1982年にサンケン電気という日本の会社に就職しました。そのサンケン電気が、1990年にアレグロを買収したことが背景にあります。
買収後のアレグロは業績が厳しく、1999年から私が経営再建に携わることとなりました。そうして黒字経営に転換し、営業利益率は12~15%台を推移するようになりました。磁気センサーの市場では、世界トップのシェアとなっています。また、2020年にはナスダック上場も果たしました。従業員数は4000人ほどです。
アレグロの改革を行う中で、私は2001年から同社の取締役副社長、2013年から2017年までは取締役社長を務め、2017年から取締役会会長となりました。以降、2025年8月まで会長として取締役会の運営を担ってきました(その後、現在は取締役および名誉取締役会会長を務める)。
日置圭介氏(以下敬称略) 日本人がNYSE(ニューヨーク証券取引所)やナスダック上場企業の取締役会メンバーとして参画しているケースはあるものの、鈴木さんのように、会長としてリードされたのは非常に珍しいのではないでしょうか。少なくとも私は聞いたことがありません。取締役会は「執行(※)に対する監督の位置付け」であり、世界と伍していく日本企業にとって、その運営における「本当の世界水準」を知っておくことが大切です。アメリカでボード(取締役会)の運営をしてきた鈴木さんの体験はとても貴重であり、多くの学びがあると思います。
※企業において業務執行を担う人員







