住友ゴム工業代表取締役社長の山本悟氏(撮影:榊水麗)

 1909年、英国ダンロップ社の日本工場として神戸市で創業して以降、長い歴史を刻んできたタイヤ大手の住友ゴム工業。今年(2025年)は年初に欧州、北米、オセアニアのダンロップ商標権を買い戻し、改めてワールドワイドにダンロップブランドのラインアップ拡充を進める起点となったほか、「センシングコア」や「アクティブトレッド」といった先進的な独自技術の世界展開も始まっている。自動車産業が100年に1度と言われる転換期にある中、同社ではどのような勝ち残り戦略を描いているのか、山本悟社長に話を聞いた。

タイヤ情報の検知ソフトで30年にわたりデータを蓄積

──自動車業界はCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)やMaaS(自動運転やAIなどを掛け合わせた次世代交通サービス)の時代と言われて久しいですが、住友ゴムの変革の現在地は。

山本悟氏(以下敬称略) 将来の自動運転時代も見据えながら、次のステージに向けて着実にポジションを築いていこうと考えています。

 当社にはDWS(デフレーション・ウォーニング・システム)という、タイヤの空気圧低下を感知する独自のソフトウエア技術があります。DWSを実用化したのは1997年で、以来30年近くにわたってそのデータを蓄積してきました。

 私が住友ゴム工業に入社したのは1982年ですが、84年に英国のダンロップ社から欧州事業を買収し、86年には米国ダンロップも買収しています。ダンロップ社にはもともとタイヤの空気圧変化や摩耗度を読み込む技術がありましたので、その検知にどのような情報が必要かを把握できる点で、われわれは先行していました。

──DWSを進化・拡張させたものが、荷重、路面状態、摩耗などが検知できる「センシングコア」のソフトウエア技術ですね。