ジヤトコ代表取締役社長兼CEOの佐藤朋由氏(撮影:榊 水麗)

 世界的に自動車の電動化が進む中、親会社の日産と電動パワートレイン「X-in-1」を共同開発し、欧州市場進出の足掛かりも築いたジヤトコ。世界シェアトップのCVT(無段変速機)事業を継続しながら、電動パワートレイン、電動アシスト自転車用ドライブユニット、電動バイク向けインホイールモータードライブユニットなど新たな事業領域への拡大も図る。自動車業界が大きな変革期を迎える中で、ジヤトコはどう生き残っていくのか。佐藤朋由社長に話を聞いた。

レッドオーシャンでも挑戦する

──電動アシスト自転車と電動バイク(オートバイ)の両分野でドライブユニットの発表をしていますが、この分野に着目したのはなぜですか?

佐藤 私が専務時代に新規事業推進部門を設立しました。なかなか新規事業が思うように進展せず、悩んでいた中で副社長就任時に私の担当部門内で「全ての車輪にドライブユニットを搭載する」という戦略的コンセプトを掲げました。

 今後、電動化は全ての移動体に波及すると予想しており、移動するものには必ず車輪が付いているため、車輪にドライブユニットを搭載しようという発想です。自転車もオートバイも、既にレッドオーシャンであるという意見が多数ありましたが、「当社のコアコンピテンシーが生かせる分野に参入しよう。当時から開始していたX-in-1の技術を小型化すれば、活用できる」と判断しました。

 実際に開発を進める中で興味深い発見がありました。ギアを扱う当社は、初期設計の段階でも、既存製品より広いギア比を実現でき、これにより低速域から高速走行まで幅広くカバーできるのです。

ジヤトコ製ドライブユニットを搭載した電動アシスト自転車のプロトタイプモデル。後輪車軸に変速機とモーターの2-in-1ユニットを搭載している(撮影:乙黒 恭平)

──電動アシスト自転車についてですが、初めてこのニュースを聞いた際には、世界的に考えればブルーオーシャンなのではないか? と感じました。

佐藤 参入してみると予想以上の可能性を感じました。当初は、正直に申し上げますと、当社は自転車業界についてはあまり詳しくありませんでした。ただ、今申し上げたような技術的優位性により、明確な差別化を図ることができたのです。現在は他社メーカーが後方から追随してくる状況となっており、先行者利益を享受している市場環境です。